レーザービームの王子様
日差しを反射する真っ白なワンピースが眩しい。やわらかそうな栗色の長い髪をふたつに結わえた、おそらく自分よりいくつか年下の女の子。

……こんな子に、こんなところを見られてしまうなんて。



「こ、れは、目に砂が入ったから……、」



苦し紛れの言い訳だ。

そして彼女も騙されてはくれないらしく、一度俺の頭のてっぺんからつま先まで視線を走らせて。



「おにーさんって、さっきの試合で2番手に投げてたピッチャーだよね? 海北中の」



ああ、身元までバレてるし……校名が入ったユニフォーム着てるから仕方ないけどさ。この子、俺たちの試合観てたのかよ。


完全に誤魔化す気力もなくした俺は、情けなくもそのまま黙り込む。

こちらの反応を確認し、女の子は納得がいったようにひとつうなずいた。



「そっか。さっきコテンパンにやられてたから、こんな隅っこでこっそり泣いてたんだあ」

「……帽子。拾ったんなら、さっさと行けば?」



あまりにもどストレートに図星を刺されたものだから、ついイラついてつっけんどんな言い方になってしまう。

彼女はそんな態度にも気を悪くした素振りを見せず、代わりに「うーん、」と何やら難しい顔をして麦わら帽子をかぶった。



「まあ、でもアレは仕方ないよね。外角低めは、お兄ちゃんの1番スキなコースだもん」

「……お兄ちゃん?」

「功斗中の5番バッターだった3年生。深町 橙李。私のお兄ちゃんなの」



……マジかよ……ホームラン打たれたあの5番の妹か、この子。

ますます情けない。試合で負けた相手チームの家族に、こんな場面見られて。
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