レーザービームの王子様
もう、やだ。消えたい。穴があったら入りたい。つーかもうどっか行ってくれよ、この子も。

イライラを通り越して、再び胸の中には自分に対する不甲斐なさや怒りが去来する。



「はあ……」



無意識に、深くもれるため息。気付けば俺は、つい先ほど会ったばかりの年下の女の子に、自分の中にある淀んだ思いを吐き出していた。



「……情けないだろ。試合で結果出せなかった挙句、ひとりでうじうじ落ち込んで」

「………」

「いっつもこうなんだよ、俺は。大事なところでうまくいかない。おまけに打たれ弱い。……俺が野球をすることにいい顔をしない親にも、強く言い返せないし」



家業を継ぐことには納得してる。でもだからって、今すぐ取り上げられたくはないのに。


うつむいて、泥で汚れたスパイクのつま先を見つめた。

女の子は、黙ったまま。……そりゃそうだよな。初対面のヤツにいきなり愚痴られたって、ふつーに反応に困るっつの。


自分からこの場を去ろうと顔を上げかけたとき、彼女が動いた。

突然俺の右手を小さな両手が掴んできたから、びくっと身体を揺らしてしまう。



「なっ、」

「でもおにーさんは、ちゃんと努力してる人だね」

「は……?」



にぎにぎと右手を掴まれながらの言葉に、思わず怪訝な声がもれた。

たぶん、表情にも表れていると思う。そんな俺の様子にも、彼女はにっこりと笑う。
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