レーザービームの王子様
《あ、でもさあ、》



何となくお互い電話を切る流れになっていたところで、広香が思い出したようにつぶやく。

もうドームの出入口にさしかかっていた私は、端に避けて立ち止まった。

とっくに開場時間は過ぎているということもあり、あたりはレプリカユニフォーム姿や応援グッズを持ったファンたちがとめどなく往来している。



「なに?」

《今すみれ、ひとりみたいだけど。いいのー? 愛しの総司くんほっぽいて、他の男に会いに行くなんて》

「………」



からかうような彼女の言葉に、呆れすぎてつい無言になってしまった。

次いで、はーっと深いため息を吐く。



「あのね……昔っから言ってるけど、総司と私はそんなんじゃないってば」

《いやいやいやおかしいって。広香さまの経験上断言するけど、男女間の友情なんて成立しないよ? 顔よし頭よしついでにサッカー部キャプテンでリーダーシップもありとか、あんなマンガみたいなハイスペックイケメンが近くにいて意識しない方がむしろナイ》

「えー……」

《実際、すみれってばこの歳で彼氏いない歴イコール年齢じゃん。それって無意識に総司くんと比べてるからじゃない~?》

「違うっつーの!」



つい声を荒らげると、通りすがりのタイタンズレプユニを着た男性ふたり組がビクッとこちらを見た。

とっさの愛想笑いで会釈して、私はくるりと通路に背を向ける。
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