レーザービームの王子様
球場ですみれに励まされた、あの夏から約2年後。俺は進学した高校の野球部で、今度はチームメイトとして橙李さんと出会った。

橙李さんは、地区大会で対決した俺のことを覚えてくれていて。何かと世話も焼いてもらいながら、それでもどうしても、すみれのことは聞けずにいた。

たぶん俺は、兄である橙李さんにとりもってもらうんじゃなくて……またいつか、偶然すみれと会える日を待っていたんだと思う。大概俺も女々しいっていうか、ロマンチストなんだろうな。

けれど結局それは叶わないまま学年が変わり、俺はそのうち休部しがちになって。

……そして、ある土砂降りの雨の日。橙李さんのお通夜の席という、思いもよらなかった場所で、俺とすみれは再会することになった。



《そんなに償いたいなら……っお兄ちゃんの代わりに、あなたがプロ野球選手になってよ……!!》



たいていの人は、彼女のあの言葉は重い枷になってしまっていたのかもしれない。

けれども、俺は違った。彼女の涙に濡れた強い眼差しは、悲痛な叫びは、俺の中のちっぽけな闘志に火を付けた。


反対する父親を説き伏せて、再び部活にのめり込んだ。

大学1年の秋、肩の故障で投手を続けることが難しいと言われたときも、バッティングを磨き外野手としてしぶとく生き残った。

くじけそうなときはいつも、太陽の下で見たすみれの笑顔と痛々しい泣き顔の両方を、何度も思い出して。
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