レーザービームの王子様
「広香……何度も言うようだけど、総司はちっちゃい頃から一緒に育ってきてきょうだいみたいなモンなの! 男として意識したことなんてないわ!」

《え~つまんなーい》

「つまんなくて結構!」



キッパリ言い切った私は続けて「それじゃあまたね」とたたみかけ、今度こそ通話を終了させた。

画面が暗くなったスマホをバッグにしまいこみ、またため息。


ほんとにもう……総司と私はただの腐れ縁だってのに、懲りないなあ広香。

でもたぶん、あの感覚って実際幼なじみがいる人じゃないとわかんないんだろうな。性別とか関係ない、家族みたいな存在っていうものもあるのに。


入場ゲートに立っているスタッフさんに観戦チケットを渡して半券をちぎってもらい、ようやく私はドーム内へと足を踏み入れた。

まずは、グッズショップに行って──ああそれから、夕飯まだだし食べ物のお店もチェックしなくちゃ。

いつもなら、この東都ドームに来るのは我がシャークスの応援のためだ。だけど今日は、一応ウィングスの観戦だし……普段はなんとなく意地で食べたことなかったウィングスプロデュースのお弁当、買っちゃおうかなあ。あれ、おいしそうだなって実は結構気になってたんだよね。

ひとたび建物に入ると、ドームの中はファンたちが醸し出す試合前のわくわく感に満ち溢れている。

今まで行った、どこも同じ。球場のこの雰囲気が、たまらなく大好きだ。

無意識に緩みそうになる頬をおさえ、私はグッズショップへと足を向けたのだった。
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