レーザービームの王子様
……そして、非常に不本意ながら。

今回の試合で、1番私をエキサイトさせてくれた選手が──。



《それでは、お呼びしましょう! 本日のヒーローは──久我 尚人選手でーーす!》



テンションの高いスタジアムDJが名前をコールするとともに、球場内には久我選手が打席に入るときの登場曲が流れた。

そしてダグアウトから、駆け足で久我選手本人が姿を現す。


……めちゃくちゃ悔しい、けど。間違いなく彼は、今日の勝利の立役者だ。



「ほらほら、すみれちゃんも!」

「え。っわ、」



同じエキサイティングシートのエリア内で観戦していたファンたちが、わらわらと座席を立って前に詰めかける。

私も興奮した様子の松永さんに引っぱられ、不可抗力で最前列へと立った。


ホームベース近くに設置されたお立ち台に久我選手が上がり、ヒーローインタビューが始まる。



「東都ドームにお越しのみなさん、そしてテレビラジオの前でウィングスを応援しているファンのみなさん、お待たせしましたヒーローインタビューです。今日のヒーローは6回に逆転スリーランを放ち、さらに8回の守備ではアクロバティックなダイビングキャッチでドームを沸かせた久我 尚人選手です! 久我選手、おめでとうございます!」

「ありがとうございまーす!」



傍らに控える男性アナウンサーからマイクを向けられ、久我選手はかぶっていたキャップを持ち上げながらファンたちに笑顔を向けた。

それに応えるように、ドーム全体から拍手や歓声が沸き起こる。……主に女性の黄色い声で。



「はああん、ヒサくんのヒロインを生で聞けるなんて今日はほんとにツイてる……!」



そして、私の右隣りからも吐息混じりの悩ましげな声が。

奥さーん、旦那さんすぐ横にいますよ~。
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