レーザービームの王子様
「久我選手はすでに今月2度目のお立ち台ですが、率直な今の心境をお聞かせ願えますか?」

「いやぁもう、最高です! ファンのみなさんを見渡せるこの場所は、本当に大好きなので!」



彼の『大好き』という言葉に反応したのか、スタンドのあちこちがきゃーっと色めき立つ。ここはホストクラブか。



「6回裏、1点ビハインドでまわってきた第3打席。ランナーふたりを置いたあの場面、どんな気持ちで打席に入りましたか?」

「そうですねー。実は今日の試合前、2塁ランナーだったタケさんに『走るの疲れるから俺が塁に出てるときは絶対ホームラン打てよ』って言われてたんで。怒られるのめっちゃこわくてホームラン狙ってました」



おどけたそのセリフに、ドーム内にまたどっと笑いが生まれた。

アナウンサーも笑いを耐えながら、インタビューを続ける。



「そうでしたか。久我選手今日は、5打数3安打の猛打賞。打率は3割5分まで上がりました。8回には守備でも素晴らしいプレーが出ましたし、まさに絶好調ですね?」

「ありがとうございます。絶好調、だといいですけどねぇ。……今日の試合は、絶対活躍するって約束した人がいるので。はりきりながらも実は緊張してました」



さらりと語られた、その言葉。

久我選手は平然としているけれど、見守っていたファンたちはにわかにざわめく。

そして私も、十数メートル先の彼を見つめたまま思わず唖然としてしまった。
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