レーザービームの王子様
どこがそんなにツボだったのか、しばらくひーひー言いながら笑っていた久我さん。

それを見つめる私の剣呑な眼差しに気付いたらしく、ようやく笑いを引っ込めた。



「あー腹いてぇ。久々にこんな笑ったわ」

「そいつぁよかったですね」



くちびるをとがらせてつぶやいた私を、「ごめんって」と未だ笑いの残る声で宥める。

それと同時にふわりと頭を撫でられたから、再び心臓が大きくはねた。



「だ、だから、そういうことを……っ」

「あーハイハイ。たしかに見た目清純派っぽいけど、まさか彼氏いたことないとはなあ」



そう話す久我さんの口調は、馬鹿にしているというよりしみじみ感心してるといった感じだ。

彼のセリフに、私はぷいっと視線を逸らす。



「……その『清純派』って言葉、嫌いなんです。顔は生まれつきのものだし、それで中身のこと『思ってたのと違う』って勝手に言われても、私のせいじゃないのに」



ああ、何言ってるんだ私。こんな、まだ2回しか会ったことない人に愚痴っぽいこと……。

だけどこれは、今までずっと自分の中で引っかかっていたことだ。冗談ぽくとか、呆れ顔とか。いろんなシチュエーションはあったけど、今日までもう何度も言われて来たセリフ。

『思ってたのと違う』、なんて。だってこれが“深町 すみれ”なんだから、仕方ないじゃない。

私は、こういう人間なんだから。……仕方、ないじゃない。
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