レーザービームの王子様
「じゃあ、遠慮なく提案。連絡先交換しない?」



あまりに予想外なそれに、思考も動きも停止する。

何の表情もなく私をじっと見つめる久我さんの真意は読めない。ただ静かに、私の返事を待っていた。



「……なにそれナンパ?」



自分で言って、なんかデジャヴだなと思ったら、初対面の【むつみ屋】で同じセリフを使ったんだった。

あのときは、あっさり『違うけど』って否定されたけれど。



「心外だな。ナンパほど軽い気持ちで訊いてるわけじゃないんですけど」



真面目そうな言葉のわりに顔はいたずらっぽく笑ってるから、まったくもって信用できない。

……できないけど。



「……それなら、まあ……教えてあげない、こともないです」



──相手はイケメンだなんだと囃したてられているプロ野球選手だとか、自分はただのしがないOLだとか。

もしかしたら、経験値が少ないのをいいことに遊ばれてしまうんじゃないかとか。

いろんなことが頭をよぎったけれど。結局私は、つい緩みそうになる口元をなんとか引き締めつつうなずいた。



「なんか、偉そうなんですけど。イラッとするわあー」

「ふっ。実は私、とある旧家の箱入り娘なんですよ」

「ないな。絶対ない」

「ちょっとくらい騙されたっていいんじゃないですか???」



だって、仕方ない。

このときの私は、どうしてか──もっとこの人のことが知りたいと、思ってしまったのだ。
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