レーザービームの王子様
何はともあれ、泥酔状態の久我さんをこのまま置いておくわけにはいかないだろう。今日はウィングスの試合なかったけど、たしか明日はアクアスタジアムでナイターだよね?

それならやっぱり、早く自宅で休んでもらわなきゃ。



「えっと。久我さん、立てそうですか?」



一応訊ねてみるけど、返事は返って来ない。

寝ているわけではなさそう。うつむいたまま、浅い呼吸を繰り返している。

もしかして、気持ち悪いとか? そう思って、少しためらいながらも背中をさすった。



「今、タクシー呼んだよ。とりあえずそれで強制送還だね」



何やらレジ近くの固定電話を使っていると思ったら、久我さんのためのタクシーを手配してくれていたらしい。

苦笑いのむっちゃんが再び戻って来たところで、私は半眼で不満を訴える。



「ていうか、むっちゃん。結局強制送還させるなら、別に私が来る必要なかったんじゃない?」

「え、だって、酔っ払ってる有名人様をひとりで帰すなんておそれ多いじゃない。すみれちゃんも一緒にタクシー乗って、家まで付いててあげてね?」

「はあ??!!」



思いがけない要請に、つい声を荒らげた。

なにそれ……っなんで私が、久我さんを家まで送ってあげなきゃいけないわけ??!!


唖然とする私に対し、目の前の大将といえば飄々としたものだ。



「きみたち、メールのやり取りするような仲なんでしょ? 家の場所も知ってるんじゃないの?」

「し……っ知らない知らない!! 知るわけないでしょ!!?」

「えーそうなの? でもまあ、今回は頼むよ~」
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