レーザービームの王子様
な、なに言ってんの、むっちゃんってば。

久我さんが、……私に会いたいって、言ってくれてたなんて。

そんなこと、聞かされても……どういう反応していいかわかんなくて、困る。


頭の中でそうは思いながらも、自然と頬が熱くなった。

いや、うん。これは、不可抗力でしょ? だって見た目はかっこいい有名人に、真意はどうあれ「会いたい」なんて言われたらしいんだから。

べ、別に私、久我さんのファンとかじゃないけど。それでもまあ、少なくとも向こうに嫌われたりしてるわけじゃないんだろうなってことがわかって……えっと、うん。うれしい、かな。


店員さんと協力して、身体の大きい久我さんをなんとかタクシーまで連れて行った。

後部座席に押し込み、少しだけ迷った末、私もその隣りに乗り込む。

……まあ、寝落ちでもしたら、このドライバーさんかわいそうだし。

とりあえず、家の前にたどり着くまでは見届けよう。



「どちらまでですか?」



運転席から、ドライバーさんが訊ねて来る。

久我さん、と軽く肩を揺すると、彼はぽつぽつと自分の住んでいるらしき地名を答えた。

なんだ、意外とここから近い。車で15分といったところだろうか。


そうして私と久我さんを乗せたタクシーは、夜の街を走り出した。
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