レーザービームの王子様
【拝啓 深町すみれ様
先日はたいへんご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんでした。
つきましては改めて謝罪・御礼を申し上げたい所存なのですが、深町様のご都合のいい日時はございますでしょうか? 敬具
東都ウィングス 久我 尚人】
お手軽なアプリにも関わらずそんな恭しいメッセージが久我さんから届いたのは、彼を介抱した雨の日からちょうど1週間が経った夜のこと。
そしてそこから2日後にあたる土曜の夜の今現在、私が思うのは──。
「(……なんで私、こんなところにいるんだろう……)」
来慣れない駅前に設置されたオブジェの傍らに立ちながら、思わず遠い目になる。
ちらりとすぐそばにある時計を見上げてみると、時刻は午後6時50分。……約束の時間まで、あと10分だ。
頭の中でそう考えたタイミングで、バッグの中のスマホが鳴った。
取り出してディスプレイを確認すると、久我さんからの着信を知らせている。私はすかさず受話ボタンをタップした。
「もしもし?」
《すみれ、今どこ?》
「駅前の、よくわかんない白いオブジェの横です」
《ふ、よくわかんないって……あ、いた》
最後のひとことは機械越しの声と同時に、自分のすぐそばからも届いた。
スマホを耳にあてたまま振り向くと、私と同じように電話のポーズをした久我さんが、片手を挙げながら小走りに近付いて来る。