レーザービームの王子様
「それならまあ……了解です」



イタズラっぽい笑みを浮かべる久我さんの説明に、私はようやく納得してひとつうなずいた。

すると久我さん、その笑顔は崩さないまま、今度はなんだか含みのある様子でジロジロこちらを見下ろして来て。

不躾な視線に、つい身構えながら彼を睨み上げる。



「な、なんですか、その目は」

「ふーーん。すみれ、今日はデートっぽいひらひらしたカッコしてんじゃん」

「……!」



にやにや笑いで放たれた言葉。私はカッと頬に熱が集まるのを感じた。

今の私の服装は、ブルー系の小花柄ワンピースにグレーのカーディガン。足元はベージュのパンプスで胸まであるウェーブがかった髪をハーフアップにし、我ながら女子っぽい格好をしていると思う。

久我さんと知り合って以来、会ったときはいつもパンツスタイルだったから……彼が私の服装を指摘して来るのも、不思議じゃない。


で、でも別に、意識してひらひらスカートにしたわけじゃないし! クローゼットを開けてたまたま目に入ったのが、このワンピースだっただけだし……!!

なんだか彼の顔を見ていられなくて、私は視線をうろうろと泳がせる。



「で、デートって……別に、そんなつもりじゃ、」

「なんで。デートだろ、これは」



きっぱり言いきると、そのまま久我さんは私の顔を覗き込んで来た。



「そういう女っぽい格好も、似合うな。かわいい」

「……ッ」



意地悪な微笑みを向けながらそんなことを言われ、頬が熱くなる。

中身はおっさんだとよく評される私だけど、それでも一応女子。こんなふうにストレートに褒められて、うれしくないわけがない。

でも、それを素直に表に出せるほどかわいげのある性格じゃないから。結局私は視線を逸らしたまま、あくまでそっけなく「どうも」と小声でつぶやくのだった。
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