私と彼をつなぐもの。
女性はそれだけ言うと、さっさっと会社に入っていってしまった。


残された私はそれを呆然と見ていた。何も言い返す事は出来なかった。
あんなに、正面から邪魔するなと言われた事も初めてだ。


浮かれてた。
そうだよ。私と黒宮さんでは、そもそもレベルが違う。
勘違いしてはいけない。私はウサギ屋が再開するまでのただの家政婦なんだ。


唇をぎゅっと噛む。悔しくて悲しくて。



「………七瀬。」


ぽんっと肩を叩かれ振り向くとそこには恵梨香がいた。


「なんか、大変そうだったね。」


そう優しく微笑む恵梨香に私は抱きついてしまう。
ヨシヨシ。なんて言いながら私の背中をさする恵梨香。


そんな私達二人を出社する人たちは不思議な顔をして通りすぎていった。


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