私と彼をつなぐもの。
あのあと、恵梨香にあの美人な女性について教えてもらった。
彼女はCAの桜井 優子さん。今年のミスAANだ。来年の会社のカレンダーでも表紙を飾るそうだ。彼女が、黒宮さんの事を好きなのは有名な話らしく他のCA達も桜井さんがいるところでは黒宮さんに近づかないらしい。
そして、恵梨香は黒宮さんについても教えてくれた。
黒宮さんは以前、ピアニストの花井 香澄という女性と付き合っていた。
と。
私は休憩時間にいつもの窓際のカウンターに座り、止せばいいのに、スマホで
『ピアニスト 花井 香澄』
を検索してしまう。
写真が何枚も表示される。そこには桜井さんとはまた違うタイプの美人。どちらかというと、『可愛い』という言葉がピッタリな女性。
茶髪にフワフワのパーマをかけた肩までのボブ。くるんとした大きな目。
スタイル抜群の美人CA、桜井さんと。
可愛いくてピアニストの花井さん。
「………完全に私の出る幕はないじゃんかぁ。」
カウンターにぐたぁっと倒れる。
さらにスマホの検索ページを見ると、近々ヨーロッパにいる花井さんが帰国するという記事があった。
始まったばかりだけれど。なにも伝えていないけど。
もう、失恋した気持ちだ。
だってそんな完璧なライバル二人に私はどうやっても追い付けないし、黒宮さんが私を選んでくれるとも思わない。
「これ以上好きにならないようにしなきゃ。」
少しだけ滲んだ涙を手でこすった。