毒舌王子に誘惑されて
ワンピにスニーカーがしっくりこなくて結局パンプスを履いてしまう私は、もう若い女の子ではないんだろう。

しっかりリサーチしないと、原宿で流行りのお店なんてわからない。


30歳だからってだけじゃない。


仕事ばっかりで、恋も遊びもさぼってたツケだ。

気がつけば周りに置いていかれてたのに、その事に気がつきもしなかった。


私はどこかで道を間違えたのかな。
今、歩いているこの道はちゃんとゴールに繋がっているのかな。

真っ暗で何も見えなくて、前も後ろもわからないよーー。


ふと顔を横に向けると、サイドテーブル に置きっ放しにしてあった読みかけのサブリナ最新号が目に入った。

私はそれを乱暴につかみ、ビリビリと力任せにページを破いた。
誌面で美しい笑顔を見せるモデルの顔が醜く歪む。

怒りとも悲しみともつかない湧きあがってくる暗い感情を指先にこめて、ひたすらページを破く。

客観的にみたら、ものすごく恐ろしい光景だと思う。
いい歳した女が怖い顔で雑誌を破いているなんて、ホラーでしかない。

「はぁ〜〜〜」

わざとらしい大きな溜息とともに、破いた紙を天井に向かって放り投げた。

それはハラハラと紙吹雪のように宙を舞った。
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