毒舌王子に誘惑されて
「葉月 哲平です。入社4年目で、ずっと週刊リアルにいます」

葉月君は欠伸をしながら、雑な自己紹介を済ませた。
こんな見た目で一応うちの正社員だというから驚きだ。

仮にも先輩に対する態度とは思えないけど、これが噂のゆとり世代ってやつなのだろうか。

「佐藤 美織です。 私は今年で8年目。
ずっとファッション誌だったから、一から教えてもらうことになっちゃうと思うけど、よろしくお願いします」

仕事を教わる側として、私は彼に頭を下げた。


葉月君は簡単に仕事の流れや編集部のメンバーなどを説明してくれる。

「今は不在だけど、うちの社員はあと二人います。 あっちの島は契約の記者とアルバイトの席ね。 奥のフリースペースは編プロの人達の作業場だから、空けておくようにしてください」


愛想はないけど、段取り良くテキパキと話す様子から、意外と仕事はできる子なのかも知れないと思った。


「ありがとう。 私は何から始めたらいいかな?」

一通りの説明を聞き終え、そう言った。
葉月君は私の頭から足先までをジロジロと値踏みして、口を開く。

「まずは、その無駄に派手なメイクとか服とか、プラダのバッグとか要らないです」

「え?」

「あ、そのヒールの靴も邪魔なんで脱いで下さい」


な、何なのよ。 この男は。

こんなふざけた格好したチャラチャラした後輩に何で私がお説教されなきゃなんないのよー。


「早速仕事いくんで、急いで下さいね」

やる気なさげなその声に、私はますますイライラを募らせた。
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