毒舌王子に誘惑されて
私はふぅーと大きく深呼吸して、なんとか気持ちを落ち着かせる。

「名残惜しいよ。もっと一緒にいたいって思うくらい今日は楽しかった。

けど、泊まりはダメ。 いい歳してって思われるのはわかってるし、ほんとにその通りなんだけど・・・曖昧な気持ちでそういう事したくないから」

キスはしたくせにその先は嫌なんて、自分でも面倒くさい女だと思う。

こんな風にチャンスを自ら逃すような事してるから、私はいつまでも結婚できないんだろうな。

葉月君の言う通り、確実に行き遅れるっていうか一生独身かも・・・。


「ぷっ、ほんとバカ真面目ですよね。
まぁ、いいや。 曖昧じゃなくなるまで待ちますよ」

「えっーー」

「おやすみなさい。 また会社で」

葉月君はあっさり背を向けると、ヒラヒラと手を振って帰っていった。
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