毒舌王子に誘惑されて
「美織ちゃん、今なんか立て込んでたっけ? 葉月も来るの?」
佐藤さんの口から葉月という単語が出ただけで、私はものすごく動揺してしまって飲んでたお茶を吹き出しそうになる。
「ゴホゴホッ。 いや、ちょっとした雑務なんで、葉月君は来ないかと・・」
「ーーなんか顔赤いけど、平気? 風邪でもひいた?」
「大丈夫、大丈夫です。 何でもないですから」
佐藤さんは心配そうというよりは、おかしなものを見る目で私を見る。
大した仕事があったわけじゃないので、6時前には一段落して会社を後にした。
見上げた空はまだ明るく、風も随分暖かく春らしくなっていた。
日曜日のオフィス街はしんと静まり返っていて、寂しいくらいだ。
「ーーりっ。 美織っ」
ぼんやりと歩いていた私の背中に声がかかる。
自分が呼ばれたのだと気がつくのに少し時間がかかった。
ゆっくりと振り返ると、懐かしい笑顔が飛び込んできた。
「・・・裕司」
驚きのあまり、それ以上は言葉が続かなかった。
育ちの良さを感じる端正な顔立ちは私の記憶にあるものより少し大人びていたし、身体つきも以前よりがっしりとした気がする。
けど、誰からも好かれる穏やかな笑顔はちっとも変わっていない。
「やっぱり美織だ。 久しぶり」
佐藤さんの口から葉月という単語が出ただけで、私はものすごく動揺してしまって飲んでたお茶を吹き出しそうになる。
「ゴホゴホッ。 いや、ちょっとした雑務なんで、葉月君は来ないかと・・」
「ーーなんか顔赤いけど、平気? 風邪でもひいた?」
「大丈夫、大丈夫です。 何でもないですから」
佐藤さんは心配そうというよりは、おかしなものを見る目で私を見る。
大した仕事があったわけじゃないので、6時前には一段落して会社を後にした。
見上げた空はまだ明るく、風も随分暖かく春らしくなっていた。
日曜日のオフィス街はしんと静まり返っていて、寂しいくらいだ。
「ーーりっ。 美織っ」
ぼんやりと歩いていた私の背中に声がかかる。
自分が呼ばれたのだと気がつくのに少し時間がかかった。
ゆっくりと振り返ると、懐かしい笑顔が飛び込んできた。
「・・・裕司」
驚きのあまり、それ以上は言葉が続かなかった。
育ちの良さを感じる端正な顔立ちは私の記憶にあるものより少し大人びていたし、身体つきも以前よりがっしりとした気がする。
けど、誰からも好かれる穏やかな笑顔はちっとも変わっていない。
「やっぱり美織だ。 久しぶり」