毒舌王子に誘惑されて
「はい。頼まれたもの、買ってきたけど」

葉月君は私が差し出したコンビニ袋を受け取ると、中からごそごそとおにぎりを取り出した。

「うわっ。ツナマヨって言ったのに、なんで梅干なんですか。 俺、梅干食べれないんですけど」

「ツナマヨは売り切れてたの。 梅干だけ取って食べたらいいじゃないの」

日本人のくせに梅干も食べれないなんて
・・これだからゆとり世代は。

聞こえないように、小さく呟く。

つもりだったけど、彼はやたらと耳が良かった。


「食べ物の好みとゆとりは何も関係ないでしょ。 ていうか、美織さん何年生まれですか?」

「86年だけど」

「じゃ、ゆとり世代から1つ上なだけですね。 そんな変わりません」

「うそ!? ゆとり世代ってもっと若い子のことじゃないの?」

「嘘じゃないですよ。ゆとり世代は87年〜04生まれを指すんです」

葉月君は妙にスラスラと説明しながら、早くも二つ目のおにぎりに手を伸ばした。私も小腹が空いていたので、買ってきたサンドイッチを一口かじる。

「へー、知らなかった。 何でそんなに詳しいの?」

「ゆとり部下の育て方、さとり世代との飲みニケーション とかってやつ。 週刊誌の定番企画ですから」

なるほど。確かにおじさんの好きそうなテーマだ。

「よく知りもしないで、馬鹿にしてごめんなさい。
けど、梅干は身体にいいから食べた方がいいと思う」

ゆとり世代への認識不足は認めるけど、梅干し食べれないなんてやっぱり子供だと思う。

「・・・ばばくさ」

そう言って、鼻で笑われた。

か、可愛くない。
顔は可愛いのに、ちっとも可愛くない。

絶対に、永遠に、こいつとは気が合わない。
私はそう確信した。
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