毒舌王子に誘惑されて
6.女心と秋の空
[おつかれー!聞いたよ〜添田のスクープ、美織のお手柄なんだって!?
すごいじゃん! 私は昨日大阪出張から帰ってきたよー。 久しぶりに近況聞きたいから今日飲みに行こー??
何時に上がれそう??]

出社してすぐ、いつも通りにメールボックスを開くとそんなメールが届いていた。

会社のアドレスに堂々と私用メールを送ってくる相手は、中野 風子。

こちらの都合などお構いなしな文面が風子らしくて、クスっと笑みがこぼれた。
小さな口でマシンガントークを繰り広げる風子の顔が頭に浮かんでくる。

同期入社の彼女とは全然タイプが違うにも関わらず、最初から妙に気が合った。

お互いにまだ独身ということもあって、しょっちゅう飲みに行く仲だ。
私の数少ない親友の一人。


[了解! 今日は9時前には上がれると思う。 いつものお店で待ってるね。遅くなりそうなら連絡して]

カタカタと文字を打ち込んで、送信をクリックする。
風子は中高生向けの少女漫画誌の編集部にいる。担当作家さんのサイン会とかで
昨日まで大阪に行っていたらしい。

出張から帰ってきたばかりじゃ、今日は忙しいんだろうな。

きっと私の方が待つことになるだろうと思って、お店での待ち合わせを提案した。

風子は根っからの少女漫画好きだから、毎日とっても幸せそうに働いているけど、漫画誌の編集部は社内でも1.2を争う激務の部署だ。
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