毒舌王子に誘惑されて
「知らない筈ないじゃない!! 数少ない我が社のイケメンの一人だもん。 もちろんチェック済みよ〜」

・・・なんだ、そういう事か。
私はほっと息を吐く。

「けど、後輩って言っただけで何で葉月君てわかるのよ?」

「だって、リアル編集部に私達より下の代は葉月君だけでしょ」

「そうだけど、なんで風子が他部署の人員構成まで把握してるのよ!?」

「え〜自然と耳に入ってくるんだもん」

風子はにっこり笑って、事もなげに答える。人付き合いが得意じゃない私と違って、風子は社内外問わず顔が広く、情報通だった。

「で、美織は葉月君が好きなの? 好きじゃないの?」

風子は身を乗り出して、直球の問いを投げかけてくる。
私はうっと言葉を詰まらせた。

「・・わかんない。好きになっちゃうかも知れないって一瞬は思ったけど」

「も〜。30にもなって、そんな80年代少女漫画のヒロインみたいなこと言って〜
最近はね、小学生向けの漫画だってもっと進んでるよ」

風子の話には、こうやってちょこちょこ漫画の話が入るんだけど、私にはさっぱりなので聞き流すことにしている。

「じゃあ、裕司君のことは? やり直したいって思う?」

「だから、裕司はもう私のことなんて・・」

「裕司君の気持ちはどうでもよくてさ、美織の気持ちを聞いてるんだって」

私の言葉を遮って、風子が追求してくる。
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