毒舌王子に誘惑されて
中学生の頃からファッション誌が大好きで、編集者になるのが夢だった。

出版社が狭き門だと知ってからは、がむしゃらに勉強して国立大学に入った。

過酷な就活も乗り切って、大手出版社の白英社に入社して・・・

そして、念願のファッション誌配属。


私の仕事人生は絵に描いたように順風満帆で、だから編集長になる夢もきっと叶うと無邪気に信じてた。


だから、あの時だってーーー。



だけど、全てが思い通りになんていくはずなかった。


本当は薄々気がついてた。

2つ後輩の小清水さんは私よりずっと才能がある。

努力だけじゃ、私は彼女に敵わない。


優秀な編集長なら、きっと小清水さんを抜擢するって。

わかってたけど、信じたくなくて気づかないふりをし続けた。




悔しくて、


自分のダメさが情けなくて、


涙が出そうになるのを必死に堪えて、上を向いた。


こんな時、泣いてもいいのは若い女の子だけだ。


私はもう大人で、女の子ではないから。


自分が可哀想なんて、

そんな理由では泣けない。

それが自己満足の下らない意地だともわかってるけど、絶対に泣くもんか。
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