毒舌王子に誘惑されて
「ーーそれから、そういうセリフは男を余計に煽るだけだってことも、そろそろ学習してくださいね」

耳元でそっと囁くと、そのまま耳朶を軽く食む。
私の身体がびくりと跳ねたのを満足気に確認して、次は首筋に舌を這わせた。

私は声にならない声をあげた。

「ーーはづきくっ。 くすぐったいっっ」

「そりゃ、その為にしてますから」

身体をよじって抵抗しようとするけれど、反対にぎゅっと強く抱きすくめられてしまう。

愛おしむように私を抱く葉月君の手は微かに震えていて、彼の本気が伝わってくる。

葉月君はじっと私を見つめて、言う。

「ーーどうしても、嫌?」

「ーー嫌なわけないじゃない。
嬉しくて、幸せ過ぎて、いっぱいいっぱいなだけ・・」

私は真っ赤になった頬を隠そうと葉月君の胸に顔を埋める。

「はぁー。美織さん、今日めちゃくちゃ可愛い。最初くらいは紳士的にって思ってたけど、無理かも・・・」

その言葉通り、葉月君は私の唇に噛みつくようなキスをした。
飢えた者が渇きを癒そうとするかのように、何度も、何度も。

キスは重ねる度に深くなり、貪るように求め合った。


「・・・葉月君、大好き」

「うん。 けど、俺の方がもっと好きだと思いますよ」


葉月君の大きな掌が私の素肌に触れるころには、甘い麻薬に侵されたように、私はもう何も考えられなくなっていた。

ただただ、確かにそこにある温もりだけを感じていた。


END
< 95 / 100 >

この作品をシェア

pagetop