毒舌王子に誘惑されて
【番外編】強気な瞳に恋をして
ーーこの人、絶対にもてないよなぁ。
目の前で小さな寝息を立てる彼女を眺めながら、俺はそんなことを考える。
丁寧にアイロンをかけたのであろう、シワ一つないシフォンのブラウスからは白い鎖骨が覗き、うっすらと透けてみえる肩から腕へのラインが艶かしくて、ついつい目がいってしまう。
「そういう格好やめろって言ったのに、全然わかってねー」
彼女を起こさないよう、小さな声でぼやいた。
彼女、俺の先輩兼仕事の相棒である美織さんは客観的に見てもかなり美人だと思う。スタイルだっていい。
それなのに・・・
狭い車内で男と二人きりというこの状況で、どうして、こんなに無防備に眠ったりできるんだろうか。
危機意識が無さ過ぎるだろう。
それとも、
彼女にとって俺は男のうちに入らないのだろうか。
頭をよぎったその考えは、俺を無性にイラつかせた。
眠る彼女の頬をそっと撫で、俺を誘惑する白い鎖骨に唇を落とす。
たったそれだけで、閉じた瞼の裏が熱くなり、背筋にゾクゾクと快感が走った。