吸血鬼に甘い鎖を





「……」


咲は終始黙っていた。



黙って、強い瞳で
リリーナを見つめていた。




「…でも、わかってあげて
ほしいんです。


クロト兄は、
咲さんを本当に
大切に思っているから…」



「いいよ、リリーナさん」




「…え?」


突然の言葉には、
気持ちが全く入っていなかった。




まるで、棒読みに近いような。




だけど。




「…クロト君がそういうことを
考えてるんだろうなぁっていうのは
なんとなくわかってたから」




好きになったときから、
わかってた。




昨日のだってきっと、
今日この話があったせいなんだ。





「…咲さん…」




「…クロト君が普通に私と
一緒にいられないのはわかる」



いつか来てしまう現実。



逃げていたって、
確実にその日は近づいているはずだ。





でもきっとクロト君は
私のことを最優先するはずだから。




それを一番知っているのは、
私自身だから。



だからこそ。




「…クロト君が一人
幸せになれないなんて、おかしいんだよ」


咲は強い瞳でそういった。
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