吸血鬼に甘い鎖を
「お、お兄さま!?どうしてここに・・・!」



「ん、ちょっとな」




『おい、リヴィア!咲はどこだ!?』



「一緒じゃねぇな。今日は見てない」


『はぁ?』




「お兄さま!」



私の視線にもお兄さまは動じない。


何か考えでもあるのですか・・・?




『おい!一緒じゃないって・・・どういうことだよ?』



「おまえに教えるわけにはいかねー」



『なんでだよッ』



「・・あーあー。クロトが婚約者じゃ咲が可哀相だぜ。
今のおまえ見たら余計教えたくなくなった」


クロト兄がイライラと眉間にしわを寄せ始める。




『・・、おまえ意味わっかんねぇ!
リヴィアになんか頼った俺がバカだった!
自分で探しに行く!』



グイッ。



「・・それは許さねぇ。おまえは、ここから出さない」




『リヴィア!何考えてんだよ、放せ!
咲を探しに行くんだよ』




「いーかげん分かれ!!!!」




『!』



「お兄さま・・・」




ギリッと強い力で握られた腕を、じっと見つめるクロト兄。
お兄さまの手は震えている。



『リヴィア・・・。おまえ、何を知ってるんだよ』



「・・言えない。けどな、クロト。
ちょっとだけ我慢しろ。咲が・・・おまえのために、頑張ってんだから」




『は・・・?咲が?』




「・・大丈夫。咲さんなら、きっと大丈夫ですから。ね、クロト兄」



リリーナの言葉に不安そうな、戸惑いの表情を浮かべるクロト。




「・・咲・・・」



クロトの視線の先は、窓の外へと向いていた。

< 165 / 168 >

この作品をシェア

pagetop