吸血鬼に甘い鎖を
『はいはい。
咲の気持ちはわかってっから
本当にそんなことはしねぇよ』


クロト君が手を上げて言う。




私はちょっとその姿に
きゅっと唇を結んだ。



クロト君…。






…。




「…手」



『ぁ?』


聞こえなかったらしいクロト君が
首をかしげる。



私はもう一回言うことが嫌で
手をベッドからそっと差し出した。





『咲…?』




「…手、握ってて」



それだけなら許してあげるよ。





クロト君の気持ちを受け止めなきゃ
という思いもあった。




だけど今は…






少し温かいものがほしかったの
かもしれない。






クロト君は笑って
私の手を包むように握った。







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