恋に目覚めたシンデレラ
彼女のすべてを知りたい、身近に感じたい、触れたい……。
以来、来たお見合い話しは片っ端から全て断った。
海外にいる両親には一緒に暮らし始める前に葵の存在を知らせると両親とも同棲をしたい女性がいる事に驚いたものの構わないとあっさりと了承してくれた。
「静かすぎる……」
スマホの画面をタップすると番号が表示され更にタップし耳にあてた。
ただ声が聞きたくて気付くとスマホを手にしていた。
もう遅い時間だし出てくれるかは分からないが。
ここ数日、同じ家にいながら出勤時間を早め帰りの時間も遅くなったため葵には殆ど逢うことはなかったが。
それでもこの家に帰って来ると彼女の痕跡があちこちにあってこの家の何処かにいるんだと実感できた。
玄関には葵の靴が隅の方に揃えてあってバスルームに行けば彼女の歯ブラシとコップが自分の物の隣に置いてある。
顔を見てはいなくても葵がここにいるんだということに安心しきっていた。