恋に目覚めたシンデレラ
長谷川沙織(ハセガワ サオリ)は同じ会社のOLで葵より2つ歳下の後輩。
「実はデートだったんですけど急に行けなくなったと言われて無くなっちゃったんです。楽しみにしていたのにヒドイと思いませんか?それでカラオケで憂さ晴らししたくて付き合ってくれませんか?」
デート……私には一生縁が無さそう。
沙織に美術館に付き合って貰う代わりに葵がそのあとカラオケに付き合うことになった。
美術館に入るといつものお決まりの場所へ。
動こうとしない葵に沙織は訝る。
「葵さん?」
「ごめん。先に行っててくれる?もう少しこの絵を見ていたいから」
「じゃあ、先に行ってますね」
沙織は先に奥の方に進んで行った。
ここには白い帽子にワンピース姿、微笑んでいる少女の絵が飾られている。
自分には作品の価値などは解らないけど初めてこの絵を見た時に強く惹かれるものがあった。
絵を前に立ってからどのくらいの時間が経ったのか分からない。
スッと隣に立った人の気配でそちらを見た。
スーツを着た若い男性が立っている。
「あなたはこの絵に何か想い入れがあるようですね?」
その人は黒ぶち眼鏡を掛けていて言葉遣いも丁寧で知的な男性という印象を受けた。