恋に目覚めたシンデレラ
「顔合わせには間に合わなかったようですね」
「西園寺様!おはようございます。あの……お聞きしても良ろしいですか?この方は西園寺様の婚約者ではないのですか?今、この方が違うと仰ったのですが」
「この間、小野寺さんに話した通り誤解でも勘違いでもなく彼女は俺の婚約者の葵さんです。
彼女は照れているだけです。話しておいた通りにお願いします」
滉は小野寺の言葉をその通りだと肯定してしまった。
どうして……。
婚約した覚えはない……
はっきり違うと言ってくれると思ったのに。
「あの、家政婦さん?本当に私は滉さんとは」
「葵さん!……こちらに座って下さい」
訂正しないと、そう思ったけど制するように名を呼ばれ腕を取られてしまった。
それ以上は話せないまま座る場所に連れて行かれる。
「どういうことですか?」
「小野寺さんの前では暫くは婚約者のままでいてください」
家政婦さんには聞こえないくらいの小さな声で言われた。
「どうしてですか?」
「小野寺さんは考え方が少し古いんですよ。只の友人が何日も泊まるなんて事はきっと受け入れられないと思うのであなたは婚約者ということにしておくのが一番いいんです」
「そんなのっ、あの人を騙しているみたいで嫌です」
「今さら訂正も面倒です。それにもしかしたらそうなる未来もあるかもしれない可能性はあるということです。とにかく今は言う通りにして下さい」