恋に目覚めたシンデレラ
「これ、ありがとうございました」
「失礼、小野寺さんかと思ったので」
持ってきた上着を滉に差し出した。
「支度で忙しいのでは?帰った後でも良かったのに」
「いいえ、もう支度はできてます。先に玄関の方に行ってますね」
「葵さん、少しの間ここで待っていてください」
暫く待つと鞄を持った葵の肩を抱きながら2人は部屋を出た。
ドキッとして見上げると。
「すみません。たまには婚約者らしいところを見せないと小野寺さんが変な疑いを持ちそうですし、ちょっと協力して下さい」
小野寺さんは私達のことを変に思っているのだろうか。
言われるまま玄関まで来ると一旦放して貰えたものの靴を履くと直ぐにまた肩を抱かれて車まで誘導された。
会社に着き私を降ろすと車はいつものように走り去って行った。
「おはようございます」
「沙織ちゃんおはよう」
「ちょっと良いですか?」
沙織は葵を急き立て廊下へと出た。気になる事を訊いたんですけど最近、葵さんは高級車で送迎されているって……本当なんですか?
もしかして美術館で会ったあの御曹司ですか?」
沙織には晃と一緒に暮らすことになった事は話していなかったなと思い出す。