恋に目覚めたシンデレラ
私と行きたい……そんなふうに言われたらもう断れない。
「……私で本当にいいんですか?」
「あなたとが良いんです」
男性はスマホを出しタップをして電話を何処かにかけたようだった。
《――――――これから向かう所だ。あぁ……時間通りには着く予定だよ。それで―――――》
「三枝、出してくれ」
黒ぶち眼鏡の男性が指図をすると運転手は車を発進させた。
「そうだ!訊くのを忘れてました。友人のやっているお店はイタリアンなんです苦手ではないですよね?」
「大丈夫です」
「それなら良かったです」
「あの……そのレストランてドレスコードありますか?」
「大丈夫ですよ。そういったものはないですから」
暫くしてある建物に横付けされた車から降りて男性の後から中に入って行くと「お待ちしていました」と声をかけられテーブルに案内された。
店内は気取ったお店ではなく気軽にはいれるような家庭的な感じのお店にだった。
レストランで出てきたお料理はどれも美味しくて、それに……急にここに来たのにフルコースを食べられるとは思わなかった。
「送る前に用事があって一ヵ所だけ寄りたい所があるんですが寄っても大丈夫ですか?」
私は独り暮らしだし誰かが待っているわけでもない……ちょっとぐらい遅くなっても平気だけど。
車は、ある建物の前で停まった。
途中雨が降りだし最初は小降りだったが今はかなり激しく降っている。
ちょうど傘を持っていなかったから、この車に乗せてもらって良かったのかもしれない。