恋に目覚めたシンデレラ
「どういう、おつもりですか?」
「……幹事だから下見に行くとちゃんとメールもしました」
「あの男と一緒だとは一言もなかったですが?」
葵はあえて矢嶋の名前は出さなかった。この間の事もあるし変に心配をさせてしまうかと思ったからだ。
「すみませんでした。矢嶋君の名前を出せば心配させると思ったんです。ただの下見だし特に何も」
「何かあってからでは遅いんです!」
「でも、大丈夫でした。私達はただの同僚だし矢嶋君はストーカーなんてしてなかったんです。だから心配することなんてないです」
「本当にただの同僚ですか?葵さんはあの男を好きなのでは?」
「滉さん何を言ってるんですか?」
「もし葵さんの気持ちがあの男にあるのなら仕方ない直ぐにでもアパートに住めるように手配します」
私は矢嶋くんのことなんて好きじゃない。
「待ってください!滉さんは誤解してます」
「……どれだけ心配したか解りますか?それなのにあなたは、あの男を庇ったんです」
滉さんに心配をさせてしまった……。
「滉さん……ごめんなさい」
葵が謝っても滉は無言のままだ。
「どうしたら許してもらえますか?」
滉からの返事はもらえなかった。
「お二人とも乗ってください」
見かねた運転手の三枝が声かけた。
「乗ってください帰ります」
滉に言われ葵は車に乗った。
帰りの車中、葵は滉に許して貰いたいとずっと思っていた。