夢遊病
「今日は実家寄るんでしょ?」
プレーンオムレツの美味しそうな匂いを感じながら、私は真澄に苦い笑顔で応える。
「夏穂も大変よねぇ。」
真澄の言う“大変”とは、介護のことだ。
父は昔気質の頑固者、母は少し前に倒れてから呆けてしまった。
そんな二人の介護を私が引き受けている。
…いや、私がやらされている、と言った方が正しいだろう。
兄も姉も妹も、誰も両親の面倒なんて見やしない。
その癖、お金に困ったときだけ、たかりに来るのだ。
そんなことにも気付かず、父はホイホイお金を出し、実際に面倒を見ている私には知らん顔。
それどころか文句ばかり。
私のストレスは溜る一方だ。