夢遊病

「美奈子かい?」

2階から下りてきた母と、階段のところで鉢合わせた。

「違うわ、母さん。夏穂よ。」

苦笑しながら否定する。

「美奈子、ケーキがあるよ。
食べて行きなさいね。」

ニッコリ、微笑む姿に、もう母の面影は無い。

「…そうね。後で頂くわ。」

ケーキなんか無いけれど。


夕刊を取って、母の体を支えながら居間へ戻る。

無言で夕刊をちゃぶ台の上に置き、夕飯の用意をしようとしたときだった。

「克典も千波も美奈子も愛想の良い子に育ったのに、どうしてお前はそう愛想の悪い子に育ってしまったんだろうなぁ。」

全ての
    時間が
        止まった。

怒りに
    支配される私。

もう止まらない。

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