藍色の瞳
「いいですよ。言いたい事は伝わりました。」
そう言って優しく私の背中を撫でて落ち着かせてくれる
……やっぱり話してみると優しい人…
必死に涙を止めようとする私は、その人の言葉でお礼を言う事が出来なかった
背中を上下する温かい手
段々と落ち着きを取り戻し、頭に浮かんでくるのはただ1人
普段は何かをする気力もなく、ただただ時間が過ぎるのを待っている私
「寂しい」なんて思わない
でも、ベッドやソファー、タオルなどに染み付いたこの家の所有者である彼の香りが鼻を掠める度
胸が締め付けられるような気持ちに襲われる
それが「寂しい」って事なんだと今更に気づいてしまった
私は我慢していたのだろうか
1人でも大丈夫だと、今まで通り“自分”を作っていようと…
だからこんな些細な事で過去に囚われた自身の苦しみを思い出しみっともない姿を晒してしまった
本当の私はこんなに弱くて小さい
「……柊雅…さん」
「……」
吐き出すようにして彼の名前を呟くと
黙って背中を撫でていた大きな手は、頭へと移動した
私の中で“特別な存在”である彼を求めても、どうにもならないことくらい分かってる
彼は私に“必要の無い感情”を与えた
なのにその他には何も与えてくれない
だから苦しいんだ…
尚も頭に乗っている手を掴み
「もう大丈夫です…」
と下におろした
何も与えてくれないのに……なのに
私は彼以外の温もりが“温もり”だとは思えなかった