藍色の瞳
助手席にスマホを放り視線を前へ戻すが、俺の意識はすぐにバックミラーへと持っていかれた
さっきまで閉じていた瞼は漆黒の瞳を覗かせ、それは窓の外へ向けられている
何かを狙っているかのように鋭く細められて…
「…若、どうかなさいましたか」
何となく次の言葉が読めた俺は車のスピードを落とす
「理玖、ここで停めろ」
「承知」
すばやくハンドルを切り、車道の傍らに停車させる
柊雅は完全に停車する前にドアを開け外に降りた
そして俺が車から降りると
「車の移動は新でも呼べ。
お前は俺と来い。」
そう言い捨て行ってしまった
「……相変わらず行動が読みにくいなぁ」
苦笑いを漏らした後、新に電話をかけながら柊雅の背中を追いかけた
柊雅が真っ直ぐに向かっている先には人が多く集まっている
まだ繁華街には入ってないが、色々な店が立ち並ぶにぎやかな通り
道端にいる人々は柊雅の為に道を開け、輝いた目で見ている
そして、まるで王様のような存在の柊雅本人はある1点だけを見つめ、広く開けられた道をいつもより早いスピードで歩いていた
……何を見て……
「東城(toujyo)」
!!
静まり返っていた人だかりの中、その場にいる全員の視線を集めていた男が低い声で“そいつ”の名前を呼んだ
「……と…うが?」
そして名前を呼ばれた“そいつ”は驚いた様子で振り向くも
「……と…柊雅じゃないっ!!
きゃあぁぁ!久しぶりっっ!」
すぐに満面の笑みを浮かべ、駆け足で柊雅の元へ駆け寄った