藍色の瞳




「……?」






「…説明しろ」






華さんの言葉に興味を持ったのは俺だけじゃなく…






「あら、じゃあ今から店に行ってゆっくり…」






「行かねぇっつったはずだ」






「……つまんないの〜」






おいおい…






昼食、どこでとるつもりだよ…






「手短に済ませろ」






説明しろと命令した柊雅はそんな注文をつけた後、煙草を1本取り出し近くの壁に寄りかかった






「……そうねぇ〜」






でも華さんは、ここで『じゃあ話すわね』なんて言ってくれるほど簡単な女じゃない






「じゃあ…キスしてよ?」






「…はぁ!?」






「何よ…理玖に言ってるわけないでしょ」






「そんなこと分かってるけど…」






……分かってるだろ…そんなこと頼んだって無駄だって






「ねぇ?柊雅、良い条件だとは思うけど?」






「……」






……早く断れば良いものの






さっきの言葉が聞こえていたのかいなかったのか、立ち上る煙草の煙を細めた目で眺めている柊雅






そんな態度に最初は期待していた華さんも






「ちょっとー?聞いてるの?」






若干イライラしている様子でヒールを響かせながら柊雅に近づく






……あんまり近づきすぎるなよ






そんな俺の願いも虚しく






「きゃっ!」






コンクリートの割れ目につま先を引っ掛けたらしい華さんの身体は前へと崩れる






俺が支えれば間に合うだろう






だが生憎俺はそんな優しい人間じゃない






「……」






柊雅もきっと冷たい目で見下ろしているだろう






そう思いながら、俺はスローモーションのように倒れていく彼女を見ていた






でも…






「……っ!?」






身体を地面に打ち付ける痛々しい音は聞こえず






「……なんで…」






煙草を吸っていたはずの柊雅がしっかりと腕で華さんを支えていた







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