藍色の瞳






「……ありがとう」






「…ん」






助けられた華さんでさえも呆然としている






……柊雅、なんで






なんで?






その女はお前に好意を持っているのが分かってるのか?






嫌…きっと柊雅の事だ、分かってない






周りに無関心すぎるんだから…






「…ねぇ、今の見た?」


「見た見た、ずるい!」


「私も今度柊雅さんの傍で転んでみよっかな~」


「ってかあの娘、東城 華じゃない!?」






一部始終見ていた周りの奴らは予想通り騒ぎ始める






柊雅がいるだけでもかなりの注目を集めるのに、今なんてキャバ嬢No.1の華と密着している状態だ






……それに






「……っ」






さっきまで『キスしてよ?』なんて言っていたクセに、片方のヒールが脱げたまま柊雅に抱きとめられた華さんの顔は林檎みたいに真っ赤だ






「…おとなしく説明しろ」






「…分かった」






触れてもらえただけで充分だったらしい華さんは急におとなしくなる






優しく華さんを立たせる柊雅






やっと話が聞ける






そう思った俺は予想しただろうか?






“一部始終を見ていた周りの奴ら”の中に、“あの子”がいた事を






「……え…?」






「どうしたの?理玖」






長く綺麗なミルキー色の髪が俺の視界の端で動く






普段なら気にもとめないだろう






「いや……なんでもない………」






それでも、その目を引きつける髪に俺の心臓は嫌な音を立てていた






「……なんで」






……さっきからこればっかだな






でもしょーがねぇーよ






“外出禁止”にしたはずのあの子が居たんだから






それも最悪な場面を目撃されたかもしれないんだから…






間違えるわけがない






あれは絶対“蜜ちゃん”だ…






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