藍色の瞳
他の方法はないか考えようと思った時、ベランダの床で1段だけ高くなっている所を見つけた
そこだけ銀色で開けそうな扉になっている
近くに貼ってあったシールには
『非常階段』の文字
もしかして……
ギギギッという怪しい音を立てて取っ手を持ち上げると
「やった!」
下の49階へと続くはしごが下ろされた
いつか理玖さんが言っていた
『下の部屋の人は今いないから煩くしても大丈夫だよ』と…
無事49階のベランダへ降り立った私は鍵の開いている窓を見て
不用心だな…とは思わず、「ラッキー」と小さく呟き中へ入った
家具も何も無い広い部屋
他の家より家具の少ない柊雅さんの部屋でさえも賑やかに思えてくる
部屋の間取りは同じだった為、真っ直ぐに玄関へ向かうと一応ドアスコープを覗いて確認する
流石に黒服の人達も、他人のものであるこの部屋の前にはいなかった
……外に出られる
流石にインドア派の私も、こんなに長い間の引きこもりは我慢の限界だったのかもしれない
外に出られるということが、素直に嬉しかった
ガチャリ
内側から鍵を開け慎重に外に出ると
「んん~~~!!」
体全体を使って伸びをした
エレベータを使って黒服の人と鉢合わせると全てが水の泡になるので、階段で降りることにする
48…47…46
34…33…32
長い長い階段
50階から1階まで降りるのはそんなに簡単なことじゃない
それでも、その時の私の顔はきっと初めて遊園地に連れて来てもらった子供のように輝いていたと思う
その理由は明白
いつまで続くか分からないつまらない日常の中に、非日常が訪れたから