藍色の瞳
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「ねぇ、君この店で働かない?
絶対稼げるよ」
「お、お前って那夏じゃねぇーの?
なんだー、遊びまくってるくせに制服みたいな格好してるじゃねぇーか。」
久しぶりに外に出てきたとは言え、こうも声をかけられる回数が多いと流石に鬱陶しい
でも、柊雅さんのマンションから学校までの道のりを調べるとかなり遠く、おまけに繁華街を通らなければならない
20分前、私のお財布の中に眠っていたお金を使いタクシーに乗ったまでは良かった
私の学校がある近くの繁華街まで行って欲しいと運転手にも告げた
けれど、私は繁華街まで辿り着けなかった
何故か今日に限って道路が人と車で溢れかえっていたから
『今日、何かあるんですか?』
そう聞くも、年老いた運転手は首を傾げるばかりで私は理由を探すことを諦めた
そして、結局目的地より手前で降ろしてもらった私は自分の足で向かうことにしたんだ
そのせいで…
「なぁお前」
……また?
もうそろそろシカトしようかと考えていた私にその声はしつこく話しかける
「おーい。お前聞こえてるー?」
「………しつこいんですけど」
「なーんだ。聞こえてんじゃん」
ジロッと声をかけてきた奴に視線を向ける
「あんた、那夏ちゃん?」
繁華街によく居るようなチャラい男
昼間から遊んでるとか暇人…
そんな事を思いながら「そうですけど…」と生返事をする
早く向こうに行ってくれないかしら?
まだ学校にまで道のり長いのに…
ここは繁華街に入る少し手前の大通り
道路の両脇には色々な店が立ち並び昼間から多くの人で賑わっている
「那夏ちゃんってさぁー
少し前、若様と並んで歩いてたよね?」
「……っ!?」
聞く耳を持たずにいようとしていた私の耳に、その言葉はしっかりと届いた