藍色の瞳





「……」






無言で歩き出す柊雅さん






車に戻るという選択肢を失った私は着いていくしかなかった






私の前を歩く彼に向けられるのは

尊敬、憧れの眼差し






対して私自身に向けられるのは

嫉妬、軽蔑、そして異性からの下心見え見えの眼差し






「どうして今日若様がいるの!?」

と柊雅さんしか見えてない人もいる






けれど、聞こえてくるほとんどが






「ふざけんなよ。何若様にまとわりついてんだよ。」


「さっさと消えろよ。ビッチのくせに」


「身の程知らずってやつ?」






私への侮辱の言葉だった






……理玖さんが言ってたのはこのことか






思ったより酷いね…






段々と下がっていく視線






このまま回れ右して逃げ出せたら良いのに






肩を抱くことも、腰に手を回すことも、手をつなぐことも、隣を歩くことすらもしてくれない柊雅さんは1度も振り返ってはくれない






『蜜ちゃんがどんな人間であろうと、柊雅が自分の意思で連れていることには変わりない。
だから何も不安に思う事はないんだよ。』






ねぇ、理玖さん






「柊雅さんが自分の意思で私を連れている」っていうのは信じてもいいのかな?







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