藍色の瞳



……………





「すごくお似合いですよ!」






この言葉、これで何回目だろう






顔に疲労の色が滲み出ている私は最後の服を試着していた






「ではこの中から選びますね」






「選ばなくていい」






!?






いつの間にか試着室のそばに来ていた柊雅さんは店員からかごを取った後、衝撃の発言をした






「全部貰っていく」






「柊雅さん!?」






……今サラッと恐ろしいことを言った気がする






「…なんだ」






思わず叫んでしまった私は疲れなんて吹っ飛んでいた






「そんなに買ってもらえません…」






1着でも数万するブランドなのに、かごに入っている服の数は10着…いや20着以上かもしれない






「金の事は気にするな」






「…でも」






お金うんぬんより、そんなに必要ないと思うんだけど…






断ろうと思った私が口を開いた時にはもうレジに向かっていた






「ありがとうございました」






チーン

合計数十万






……もう何も言えない






固まっている私は最後に試着した服のままで、タグを切ってくれた店員さんが






「髪も服に合わせてセットいたしましょうか?」






と、素敵な提案をしてくれたので甘えさせてもらった






「綺麗な髪色ですね」






元の色に戻った髪の毛






褒められたのは初めてかもしれない






くすぐったい気持ちになりながらも、鏡越しに後ろに立っている柊雅さんを見ると






「っ!?」






ばっちり目が合ってしまい、不自然に逸らしてしまった





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