藍色の瞳





「……」






しばらく私の泣き声だけが響いていた






でも






「蜜」






再び聞こえてきた私の名前を呼ぶ声には悲しさが混じっているような気がして






!?






少し冷たい手が顎に添えられたか思うと






「……んぅ!?」






くいっと簡単に上を向かされ温かいものが唇に触れる






しばらく理解出来なかった






でも触れている温もりはさっきとは随分違った心地よいもので






視界に映っているのは、長めの前髪とその隙間から見える長い睫毛






「いやっ……離し…」






私の望んでいた人






望んでいた人だけど……






今はその唇が触れることがひどく悲しかった






さっきまで触れていたのは柊雅さんじゃない






大嫌いな人に触れられた後に柊雅さんに触れられても






悲しく惨めなだけだった






「お願い……やめて…」






弱々しく出た声に反応して離れていく唇






至近距離に柊雅さんがいるせいで、みっともない顔を隠すことなんて出来なかった






「…あいつに何された」






「キ…スだ…け…」






離れた瞬間動いた形の良い唇






そこから出た声はさっきとは違いひどく恐ろしいものだった






その怖さに慣れることなんて出来ていない私はやっぱりビビっていて…






「お前は何も考えずに黙ってろ」






チッと激しく舌打ちした後降ってきた言葉に黙って頷くしか出来なかった






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