藍色の瞳
「蜜ちゃん!大丈夫?」
柊雅さんの後に続いて路地裏を出てきた時、向こうから理玖さんが走ってくる
心配そうな顔で駆け寄ってきた理玖さんは、私の肩に手を起き顔を覗き込んでくる
「大丈夫です。
すみません…」
私が勝手に行動したから…また迷惑かけちゃった…
「……それならいいけど…」
茶色の遊ばせた髪を揺らしながら首を傾ける理玖さんは、曇った顔を元に戻してはくれなかった
「理玖」
「…はい!」
隣から聞こえた声に、バッと手を離し(やべっ…)というような顔をしている
「この路地にいる奴ら、片付けとけ」
「承知」
「…Serpentの連中だ。幹部もいる」
「…っっ!」
……?
Serpent?
分からない単語ばかりで何を言っているかさっぱりだったから、視線を理玖さんに向けると…
『……もうちょっとだけ我慢してくれたら嬉しいな』
そう意味深な言葉を言っていた時と同じ、複雑そうな笑みを向けられた
「若、今から向かわれますか?」
「あぁ。
お前は蜜を送っていけ。」
……え?
なんか…急展開っぽい?
「承知」
私がぼーっと突っ立ってる間、淡々と交わされていた会話
「蜜ちゃん、他に行きたい所があるかもだけど今日はもう帰るね」
…行きたい所なんて別にない
「はい」
「じゃあ、向こうに車止めてきたから行こう。」
そのまま理玖さんに促され、ゆっくりと足を進めて行く
5歩くらい歩いた時、チラッと後ろの柊雅さんを見ると
「………」
「………」
この場にいる全ての人の視線を集める彼は、私と一瞬目を合わせると
くるりと方向転換し、人混みの中に消えていった
……遠い
とても、とても遠い
会話の意味も、どこに行くかも教えてくれない
分かってる
私なんかに教えてくれないのは分かってる
だけど遠いこの距離は、心が寂しい
せめて
『遅くなるから寝とけよ』
って言って頭を撫でて欲しい
……って……
欲張りだね…私