藍色の瞳






車は家の前で静かに停車すると、理玖さんが後ろの席まで回ってきてドアを開けてくれる






「ありがとうございます」






私が車から下りて理玖さんの手を取ると、どこからか現れた黒服の人






「今日はまたすぐに使うからここに停めたままでいいよ」






どうやら車を回収しに来たらしい






「しばらくこの車は僕が管理する。
蜜ちゃんをちゃんと守っておけよ。」






初めて聞いた理玖さんの低い声






「っ!!
承知!」






その言葉だけで何か勘づいたらしい黒服の人はビシッと背筋を伸ばし、綺麗な直角に頭を下げた






それを一目だけ見た理玖さんは、私を連れて最上階まで上がる






「今日は急に予定変更してごめんね。
後、これからの事も…

縛ることになっちゃうけど、少しの間我慢してくれたら嬉しい。」






「大丈夫です。
私インドア派ですし、部屋もものすごく広いですから。」






今日はほとんど理玖さんの笑顔を見ていない…心配そうな、申し訳なさそうな顔しか見てない






だから少しでも気にしないでもらおうと言った事だけど、本心でもある






1人なのは慣れてるから






むしろ、生活面でこんなにお世話してもらってて感謝してるから






だからそんな顔しないでほしい






私は、必要としてもらえるなら






いつまでもいつまでも待ってるから…






「じゃあ、いってくるね」






そう言った理玖さんの言葉は、いつも朝に聞くものと一緒なのに何故か胸がざわめいて






ガチャリ






オートロックの音が私を孤独の空間に閉じ込めた気がした






『8時のニュースです』






寂しくてつけたテレビからそんな声が聞こえてきたのは、お風呂に入った後届けられた晩ご飯を食べている最中で…






『今日午前9時
〇〇区の✕✕で40代男性と思われる遺体が発見され……』






ピッ






ますます暗い気分になりそうだったから電源を切った






「眠い…」






流石に寝るのには早いと思い、ベランダに出る






涼しい風に当たり煙草を吸いながら今日のことをぼんやり思い出す






『お前は何も考えずに黙ってろ』






あの時の唇の熱がじんわりと再び蘇り顔が火照った






気が付けば吸殻が2本になっていて流石にこれ以上吸えないと思った私は部屋に戻った






外の肌寒い空気に当たり少し冷えたかもしれない






耳についた唯一のお守りも冷たくなっている






チャンネル変えてテレビでも見ようかな…






何故か“まだ起きていたい”という思いが私の中にあった






それでも身体は正直で、足は真っ直ぐに寝室へと向かう






「……すぅ」






ぼふっと柔らかいシーツに身体を沈ませると、ほんの1~2分で眠りに落ちる






「お兄……ちゃん」






当たり前だけどベッドからは柊雅さんの香りがして、私は元自分の家にあったソファーで寝ていた時よりも安心していた








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