藍色の瞳




◆◆◆◆◆






小鳥のさえずり






パトカーや救急車のサイレンの音






ゴミ収集車の音楽






バイクのエンジン音






誰かの大きなくしゃみ






耳を澄まさずともいろんな音が耳に入ってくる






「……」






ずっと家に一人でいる私は独り言を言うわけもなく、ただただ静かに時間が流れていくのを感じていた






外に出るなと言われてから2週間が経とうとしている






あれから理玖さんが1度だけ家に来てくれた






来たと言ってもほんの2〜3分






顔を見せに来たと言った方が正しいかもしれない






柊雅さんは……






もちろん1度もこの家に帰っては来なかった






分かるのは“まだ捨てられていない”という事だけ






それすらも私の勝手な思い込みでしかないのかもしれないけれど






だけど、部屋の前やマンションの周りを取り囲むようにして立っている黒服の人達を見る限り、まだ自惚れていてもいいのかもしれない。






お昼近くに目覚めてからずっとソファーの上でぼーっとしていた私は、喉がカラカラに乾いていたのに気付き台所へと向かう






クシャ……






……?






紙切れのようなものを踏みつけ、視線を下に向ける






するといつも私が持ち歩いているポーチと、そこから落ちたらしい何か文字が書いてある紙を見つけた






……レシート?






勝手にゴミだと思い込んだ私は、その紙切れを拾って丸めた






でも、ゴミ箱に入れようとした瞬間






「へ!?」






クシャクシャになった紙に『片桐 新』






そんな文字が見えた






……すっかり忘れてた






連絡して欲しいと渡されてたんだった…電話番号を






「……いらない…か」






柊雅さん達と出会った日から1人で繁華街には行ってないし、もちろん今見つけたんだから連絡なんてとってない






あの日出会った限りで終わったと思ってた






だけど…






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