藍色の瞳
「ねぇ」
『あー?』
「…いつからシンに改名したの」
『……』
そう私が問うと、電話の向こうの相手は黙ってしまった
「…新…よね?」
……繁華街で言われた名前は確かに新だった
『あぁ、俺今シンっつってた?』
「は?」
数秒後聞こえてきたのは何かに気付いたような声
「何言ってんのよ」
『あ〜、ごめんごめん。
こっち女用の携帯だからさ、シンで通してるってわけ。
お前もどうせ偽名だろ?』
「……」
なるほど、確かに私は新にナンパされた覚えがある
だけど女用の携帯って…
男用の携帯を持っている私が言えることじゃないけど、新ってやっぱりチャラい…
だって“お金”が目的の私と違って“遊び”が目的なんだもん
『そういや、お前の本当の名前何なの?』
「……言わないよ?」
『へぇ?』
まさか名前を聞かれるなんて思っていなかった私は少し戸惑ってしまったけど、勿論教えない
……『教えてくれないんだ?』というような声色に若干ムカついたけど
「だって私、新とそんな仲になった覚えないもん」
『厳しーな』
「寝るつもりもないし」
『残念』
もちろん今までだって男と寝てきたわけじゃないけれど、遊び人として認識されてる以上最初に断っておいた方がいい
『じゃあ何で電話してきたんだよ』