私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)
前に出ようとした体を、秋奈が肩を掴んで止めてくる。
「夏樹」
名前を呼ばれただけなのに、頭が冷えていく。
そうだ、熱くなっちゃダメだ。
仮にも一般人に向かって、特にこんなおばさんにたとえ口だけでも怒鳴ったら負けだ…。
「お言葉ですが」
秋奈は一言置いて、おばさんを睨む。
その雰囲気はあまりにも静かで、おばさんの勢いが鈍ったのが分かった。
「私たちは駅裏商店街の自治会公認の団体です。そして、1人で置き去りになっている子どもへの声かけも活動に含まれています。子どもを預かることも、活動の1つです」
マニュアルを読むように、あくまで淡々と告げる秋奈は、そこで笑顔を浮かべる。
「子どもをその場に置いて、買い物に行って、不安にさせるくらいなら、私たちに声をかけてください。その間、責任を持ってお子さんはお預かりします。見てくれは悪いですが、この商店街の自治会のみなさんに認められた者です。ご安心ください」
「…わ、分かったわ。今回は私も悪かった…」
「ご理解ありがとうございます。今後も駅裏商店街をよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げた秋奈にならって頭を下げる。